国会で、長時間労働是正を訴える ~ 梶原貴日教組委員長
2025年4月25日、衆議院文部科学委員会で、参考人として招致された梶原貴(かじわら・たかし)日教組委員長は、現在国会において審議されている給特法の一部改正案にかかる課題等について訴えました。
梶原委員長は、今、学校現場が求めていることとして、「業務削減、定数改善、給特法の廃止もしくは抜本的見直し」を挙げ、次のように述べました。(以下、要約)
① 業務削減については、「業務の三分類」(注1)の確実な実行のための国による財政支援、学習指導要領の内容精選と標準授業時数の削減、部活動の地域移行の推進のための国による財政支援が必要。
② 教職員定数改善については、持ち授業時数に上限を設けるなど、授業準備などが勤務時間に終えることができる教職員の定数改善が必要。また、スタッフ職の拡充が必要。
③ 給特法については、すでに前回の給特法改正において課題は整理されており、廃止または同様の抜本的見直しにむけた議論をすすめるべき。
最後に、「今回の法改正は応急措置であって、教員の処遇改善としても長時間労働是正としても不十分。長時間労働を是正する仕組みを強化すべき。割増賃金や罰則規定のないままでは今回も業務削減や定数改善は大きくすすまず、2~3年経過しても30分程度(注2)しか是正されない可能性は大である」と述べました。
注1:学校・教師が担う業務に係る3分類のこと。(2019年(平成31年)1月の中央教育審議会答申で示された)
(1)基本的には学校以外が担うべき業務
①登下校に関する対応
②放課後から夜間などにおける見回り、児童生徒が補導された時の対応
③学校徴収金の徴収・管理
④地域ボランティアとの連絡調整
(その業務の内容に応じて、地方公共団体や教育委員会、保護者、地域学校協働活動推進員や地域ボランティア等が担うべき。)
(2)学校の業務だが、必ずしも教師が担う必要のない業務
⑤調査・統計等への回答等(事務職員等)
⑥児童生徒の休み時間における対応(輪番、地域ボランティア等)
⑦校内清掃(輪番、地域ボランティア等)
⑧部活動(部活動指導員等)
(※部活動の設置・運営は法令上の業務ではないが、ほとんどの中学・高校で設置。多くは教師が顧問を担わざるを得ない実態。)
(3)教師の業務だが、負担軽減が可能な業務
⑨給食時の対応(学級担任と栄養教諭等との連携等)
⑩授業準備(補助的業務へのサポートスタッフの参画等)
⑪学習評価や成績処理(補助的業務へのサポートスタッフの参画等)
⑫学校行事の準備・運営(事務職員等との連携、一部外部委託等)
⑬進路指導(事務職員や外部人材との連携・協力等)
⑭支援が必要な児童生徒・家庭への対応(専門スタッフとの連携・協力等)
※ 宮教組注:三分類には「基本的」、「必ずしも」、「負担軽減」という文言が入っています。そのため、① 地域によっては人材がいない、② 校内でのコンセンサスがないまま他の職種の業務負担増につながる、③ 地域によっては財政的に厳しくスタッフが雇用できない、などの理由で、結局すべて「教師が担う」業務になることが危惧されます。
注2:2022年(令和4年)文科省勤務実態調査集計(2023年速報値公表)で、教諭の平日1日当たりの在校等時間(10月・11月)が、2016年(平成28年)の11時間15分に比べ、2022年(令和4年)は10時間45分で、30分減少した。文科省は、「前回調査と比較して、平日・土日ともに、全ての職種において在校等時間(宮教組注:退庁時刻から出勤時刻を引いた時間。休憩時間を除く)が減少したものの、依然として長時間勤務の教師が多い状況。」と分析している。